保護犬・保護猫の譲渡にかかる費用(※保護団体から迎えた場合)
生体費用
費用はかかりません。ペットショップのように、犬や猫自体に値段はつきません。
医療費
検査(健康診断)代、ワクチン代・登録料、去勢・避妊手術など、犬・猫の譲渡に必要な医療費は、請求されるのが一般的です。これらは、犬・猫を飼育するうえで必要な医療で、いずれ飼い主となる方が支払うものを団体が立て替えている、と考えるとわかりやすいかもしれません。
請求には内訳があり、医療費の項目ごと分けられているケース、医療費すべてを「譲渡費用」としてまとめられているケースがあります。かかった医療費がひとつにまとめられている場合は「譲渡費用」以外に、「譲渡金」・「保護費用」または「医療ご寄付」という表記がされ、団体が金額を設定します。
医療費のうち、簡単な検査、混合ワクチンの接種にかかる費用、マイクロチップ装着費用・登録費用などは、行政が援助してくれる地域もあります。『譲渡推進事業』として、団体への引渡し前に去勢・避妊手術を実施する行政も増えてきており、費用が発生しないケースも出てきました。
また、保護する犬・猫のなかには、去勢・避妊手術がすでに施されている子もときどきいます。その場合も同じで、保護団体が支払う費用は発生せず、すなわち請求もありません。
交通費
遠方の団体や預かりさんの犬・猫を希望する場合は、交通費の請求がされることがあります。
保護犬・保護猫なのに……お金がかかるの?
犬や猫を保護し、新しい飼い主さんへ譲渡するまでにはかなりの費用がかかります。保護犬・保護猫にかかる医療費を詳しくみていきましょう。
混合ワクチン接種費用
『混合ワクチン』は、犬や猫どうしでうつる伝染病のうち、ワクチンで予防できる複数の病気を、1本の注射でまとめて予防するためのワクチンです。犬の場合は6種または8種、猫の場合は3種または5種の混合ワクチンを接種します。保護団体へ引き渡す前に行政で接種してくれる地域もあります。その場合、費用は発生しません。保護団体が費用を支払い、接種した場合には、譲渡時に請求されることがあります。
犬の混合ワクチン
混合ワクチン成分 | 6種 | 8種 | 10種 |
---|---|---|---|
ジステンパー | ● | ● | ● |
犬伝染性肝炎(A1) | ● | ● | ● |
犬電生成喉頭気管炎(A2) | ● | ● | ● |
犬パラインフルエンザ | ● | ● | ● |
犬パルボウイルス感染症 | ● | ● | ● |
犬コロナウイルス感染症 | ● | ● | ● |
レプトスピラ感染症(イクテロヘモラジー) | - | ● | ● |
レプトスピラ感染症(カニコーラ) | - | ● | ● |
レプトスピラ感染症(グリッポチフォーサ) | - | - | ● |
レプトスピラ感染症(ポモナ) | - | - | ● |
猫の混合ワクチン
混合ワクチン成分 | 3種 | 5種 |
猫汎白血球減少症(伝染性腸炎) | ● | ● |
猫ウイルス性鼻気管炎(FVR) | ● | ● |
猫カリシウイルス感染症 | ● | ● |
猫白血病ウイルス感染症 | ー | ● |
猫クラミジア感染症 | ー | ● |
狂犬病ワクチンと登録費用
『狂犬病予防法』に基づき、飼い犬には予防ワクチンと登録を行わなければなりません。「一時」ではありますが、保護団体は所有者としてこれらの手続きを行います。
ワクチン代(約3,000円)と登録料(1回のみ、約3,000円)は保護犬でなくても、犬を迎えるなら必ずかかる費用のひとつです。団体が支払っていた場合には、費用が発生します。所有者変更は譲渡が決まったときに行われます。
健康診断
保健所などに収容されていた犬・猫は、虫に寄生されていたり感染症にかかったりしている可能性が非常に高いです。そのため、犬・猫のノミダニ駆除薬、犬のフィラリア検査、猫白血病、猫エイズ血液検査は、多くの行政で引き渡しの前に行っているため、その場合は費用の発生はありません。
しかし地域によっては検査を行わないところもあり、その場合は支払った団体に請求されることがあります。
去勢・避妊手術
行政から犬・猫を譲り受けるときの条件のひとつに「去勢・避妊手術(繁殖制限)を行える者」というものがあります。これは保護団体も同じ条件で行政から引き受けており、新しい飼い主さんを募る前に手術を行います。
なかには犬・猫の体調や年齢などなんらかの事情で受けられず、新しい飼い主さんに譲渡後にお願いするケースもあります。この場合は譲渡後ですので、飼い主さん負担の費用となります。
医療費
保護した犬・猫がケガや病気を抱えていて、治療を施した際にかかった費用です。こういった医療費は、実は「団体負担」としているところがほとんどです。そのため保護団体は外部から支援を募っており、集められた寄付金は保護犬・猫たちの医療費に使われます。
保護団体が請求する譲渡費用は、その後を考えれば決して高いわけでありません。譲渡費用が発生しない場合は、医療を受けていない可能性が高いということでもあり、あとから飼い主さん個人で対応しなければならないことがほとんどです。
保護団体負担の医療費例
フィラリア検査、猫白血病や猫エイズ血液検査などで陽性だった場合には、すぐに治療が始められます。ノミダニ、おなかに虫が寄生している子も少なくありません。外耳炎や皮膚炎などが分かり、治療を始める子も多くいます。口の中の状態が悪い子も多く、去勢・避妊手術と一緒に歯石除去を行うケースもあります。この場合も、保護団体は新しい飼い主さんに請求するのではなく、寄付金で賄うところがほとんどです。
去勢・避妊手術を団体側の負担としてカウントし、譲渡費用をできるだけ低く抑えている団体もあります。他にもケガや腫瘍が見つかるケースもありますが、それらは基本的に預かりさん宅にいるうちに寄付金を用いて治療をはじめます。そして完治、または完治の兆しが見えてくると、めでたく募集開始となるのです。
保護犬・保護猫に必要な日用品、消耗品
保護団体の犬・猫たちは、新しい飼い主さんが決まるまで預かりさん宅で過ごします。その間の日々の消耗品、例えばミルクやフード、トイレ用品は、多くのところが預かりボランティア負担としています。こまごまとしたものばかりですが、意外とかかります。
例えば犬のフードで考えると、体重5kgの犬で1日100g、体重10kgの犬で約150gのフードが必要とすると、小型犬でも1カ月で3kg以上、中型犬であれば1頭で5kg近くのフードを消費することになります。また、保護犬・保護猫には、栄養面を考慮し、プレミアムフード以上のものを与えている場合も多く、その分費用がかかってしまいます。
これらの費用を新しい飼い主さんへ請求することはありませんが、里親さんが見つからなければ、預かりボランティアとその団体の負担がふくらんでいくことになります。
まとめ
保護犬・保護猫は生体費用こそかかりませんが、ワクチン接種代や去勢・避妊手術などの医療費を請求されることが一般的です。
医療費などの譲渡費用は、団体維持のため、ひいては犬・猫の命をつなぐために、必要な費用となっています。
そして、里親と呼ばれる新しい飼い主となる人たちは、保護犬・保護猫を譲り受けるという大きな支援で団体の活動を支えているのです。