雑種犬ってどんな犬? ミックス犬との違いは?
「雑種犬」とは、異なる犬種の交配によって生まれた犬のことを指します。
その対極となるのが、「純血種」。純血種とは、特定の傾向が強くなるよう交配を繰り返し、作出された犬のことで、自然発生した純血種の犬は存在しません。
つまり、この世に存在するすべての犬は、もともと雑種犬。言うなれば、雑種犬は犬としてもっとも自然な存在でもあるのです。
一方、品種の異なる純血種を人の手で交配し作出された犬たちを、雑種犬と区別するために「ミックス犬」と呼ぶこともあります。
チワワとダックスフンドをかけあわせた「チワックス」、マルチーズとプードルをかけあわせた「マルプー」などはよく知られていますね。
雑種犬の魅力とは?
人為的に作られたのではない、自然な存在の犬である雑種犬。
ここでは、そんな雑種犬の魅力を、考えてみましょう。
特定の病気にかかりにくい
血統種の作出や繁殖では、特定の性質を強めるため、血縁の近い犬同士をと交配することがしばしばありました。そのため、遺伝性疾患の発現率が高くなる傾向があります。
一方、雑種犬の場合、同じ遺伝的素因をもつ犬同士を交配する場合に比べて、遺伝疾患のリスクが比較的低いとされています。
比較的寿命が長い
一般的に、犬の寿命はサイズの小さい犬ほど長く、大きくなるほど短命という傾向があります。
2016年のアニコムの調査結果※でも、ランキング上位には体重10kg未満の小型犬が並んでいます。
そんな顔ぶれのなか、雑種犬(MIX犬と表記)は小型・中型両方のサイズで、長寿ランキングのベスト10に入っています。
ここかわかるように、純血種と比べると、雑種犬は寿命が長い傾向にあるようです。
地域の気候に馴染みやすい
長い時間をかけて自然繁殖が繰り返されるなか、その土地の気候風土に合った特徴を備えることで生き残ってきたのが、雑種犬です。
地域の気候になじみやすいのも当然といえますね。
性格・外見が唯一無二
狩りが得意な犬たちを交配して作られたレトリーバーやテリア、牧畜・牧羊のために作出されたボーダーコリーやコーギー、愛玩のために小さく扱いやすさを重視したシーズーやパピヨンなど、目的に応じた性質を選抜して交配する、その繰り返しで生まれたのが、純血種です。
品種ごとに似通った特徴を備えています。
一方、人間側の意図に関係なく生まれてきた雑種犬は、個性的な犬が圧倒的に多いものです。
大きさや毛並み、性格など、純血種のように型にはまらない、その子にしかない特徴が魅力でもあります。
雑種犬は恥ずかしい?
50年ほど前までは、日本にもたくさんの「野良犬」がいました。
飼い主のいない、残飯ゴミを漁ったり、鳥や小動物を狩ったり、時には人から食べ物を与えられたりして暮らしていた犬たちです。
繁殖も犬たちの自由に行われ、たくさんの雑種犬が産まれていました。
純血種のように外見が整っておらず、しつけもされていない粗野なイメージや、経済的な理由で純血種の犬を入手できないのではという偏見、飼い主に捨てられたというネガティブな印象から、雑種犬を飼うのは恥ずかしいと考えられていた時代がありました。
その後、2005年ごろをピークに犬の飼育がブームになり、犬の魅力が広く世の中に浸透するにしたがって、品種に関係なく、犬そのものの魅力に気付く人も増えてきました。
1950年に狂犬病予防法が発令されてから70年が経過した現在、一度も人に飼われたことのない純粋な雑種の野犬は、少なくなりました。
野犬には飼い主がいないため、保健所等に収容されると処分対象になる可能性が高くなります。
飼い主がいない犬や捨てられた犬たちを家族に迎えることは、罪のない命を救うこと。
今では恥ずかしさの真逆である尊い行動と、多くの人から受け止められるようになっています。
雑種犬を迎える方法
ここでは、雑種犬を家族に迎える方法を紹介します。
保健所から迎える方法
保健所や動物愛護センターなどから犬を迎えるためには、
・飼育環境が整っているか
・飼い主と家族の年齢や家族構成が譲渡条件に合致しているか
最低限、上記2つが揃っている必要があります。
さらに、犬の飼い方や飼い主の義務と責任についての講習を実施し、受講を義務付けています。
詳細な手続きは各都道府県・政令指定都市の保健所や動物愛護センターの規則によりますので、まずはお住まいの地域の保健所や動物愛護センターのホームページを確認してみましょう。
保護団体から迎える方法
譲渡会に参加する
犬の保護活動をしている団体の譲渡会に参加してみましょう。
実際に犬たちに会えるので、大きさや年齢、毛色などを直接確認できます。
世話をしているボランティアも一緒に参加している場合が多く、気になる犬の性格や生活状況、運動量や飼いやすさ、飼い主に必要な条件等を教えてもらうことができます。
多くの譲渡会では、その日のうちに犬を連れて帰ることはできません。
譲渡の話が進む場合、犬の里親希望者が住所や家族構成などの情報を提供、その内容を確認したうえで、ボランティアが犬を連れて訪問し、飼育環境が整えられるかどうかの確認がおこなわれるケースが多いようです。
里親募集サイトを使う
hugU(ハグー)など、犬の新しい飼い主を探す「犬の里親募集サイト」は、保護活動をしているボランティアが掲示板的に利用する形式のものがほとんどです。
応募条件や手続き、費用などは募集主体のボランティアにより異なります。
基本的に、居住環境や家族構成などの情報を提供したのち、犬との面会や家族との面談を実施、その結果でトライアル(お試し)飼育期間に進み、最後に正式譲渡の手続きという流れになります。
雑種犬の飼い方・注意点
雑種犬を飼うにあたって、気を付けておきたい点を整理してみましょう。
飼い方のポイント
雑種犬のしつけは難しい?
たとえば、繊細・敏感でよく吠える犬の性質は、雑種犬よりも一部の純血種でこの傾向が強化されています。そのため、性格によっては雑種犬のほうがしつけやすい場合もあります。
ただし、成犬では犬自身が身に付けてきた生活習慣があるので、しつけに根気が必要になるケースもあります。
不安や不信を抱えている犬の場合
野犬としての生活が長く、人間と信頼関係を築く機会がなかった犬では、新しい環境や人に慣れていくのに時間がかかる場合があります。
また、半ば放し飼いになっていた犬やもともと飼い主がいたと思われる犬も、人間に対して不信感を抱いていることがあります。
時に人間に追われ、捕獲の際には恐怖におびえるなどの経験をしてきた犬たちにとって、新しい飼い主は信頼できる存在なのか、最初はわからないのです。
そんな犬たちでも、いったん信頼関係ができると、心を開いて甘えてきたり、一緒に遊んだりできるようになります。
注意点
成長後の大きさが予測できない
雑種の子犬を迎える場合、将来どれくらいの大きさになるのかは予想しにくいです。
ケージやベッド、トイレトレー等は、大きめのものを用意するのがおすすめです。
日本の雑種犬の多くは、10~20kg程度の中型犬が多い傾向にあります。成犬で捕獲される犬の多くがこのサイズという点からも、将来は中型以上の大きさに成長すると想定しておきましょう。
性格や特徴が予想できない
頭がよく先回りをして行動するボーダーコリーやプードル、フレンドリーな性格の個体が多いキャバリアなど、純血種の犬の特徴は、ある程度予想ができますよね。
一方、親犬や祖先犬のわからない雑種犬では、どんな性格や気質、能力を備えているのか予想しにくい面があります。
その反面、犬種特性にしばられない、その子ならではの個性や特徴を見つける楽しみがあるのが雑種犬の魅力ともいえます。
一緒に暮らすなかで困るところはコミュニケーションを通じて修正し、よい点を見つけて伸ばしてあげることで、雑種犬との生活を楽しみ、絆を深めていきましょう。
まとめ
すべての犬の品種に共通する性質を備えた、犬らしい犬である雑種犬。
多様で個性的な外見と性格、その土地の気候風土に合った体質、遺伝病のリスクが純血種に比較して少ないなど、飼いやすい魅力もたくさんあります。
真の犬好きにこそ愛されるといわれるのも、よくわかりますね。