Happy Tabbyとは
『一般社団法人HappyTabby』は、2019年に獣医師・橋本 恵莉子さんが立ち上げた法人です。
猫の過剰繁殖により引き起こされる諸問題や、その解決に奔走するボランティアの方々の姿を目の当たりにし、獣医師がすべきこと、獣医師こそできることを模索し、活動をおこなっています。
獣医師として『Happy Tabby Clinic』では猫の不妊手術をおこない、『一般社団法人Happy Tabby』では猫の不妊手術の普及のため、またその必要性を知っていただくため、多方面に向けた啓発活動にも力を入れています。
「獣医師とつくろう! 人も猫も笑顔で共生する未来」をモットーに、日々活動しています。
今回お話を伺ったのは?
『Happy Tabby』は、大阪府八尾市にある一般社団法人です。
今回は設立者でもあり、代表理事も務める、獣医師・橋本さんに、Happy Tabbyの活動内容についてお話を伺いました。
Happy Tabbyの活動内容について
クリニックでの不妊・去勢手術
Happy Tabbyの主な活動は、クリニックでの猫の不妊・去勢手術です。
今の日本では、猫が増えすぎて管理しきれず、そこからあふれた子が殺処分になっているのが現状です。
「ボランティアさんはたくさんいらっしゃいますが、その方々の手も限られているので、やはり元栓を締めるのが大事」と話す、橋本さん。
根本解決にはやはり手術が必要なので、Happy Tabbyの活動もクリニックが中心となっているそうです。
子どもたちへの教育活動
いくら手術をしても、捨てられたり虐待されたりする猫がいる限り、かわいそうな命はなくなりません。
そういった命を減らすべく、一般の方々の道徳心を育てることを目的にはじめたのが「子どもたちへの教育活動」です。
その一環として生まれたのが「あるすてねこさんのおはなし」という絵本。4~5歳くらいの子に絵本の読み聞かせすると、悲しくてわんわん泣く子も多いそう。
まだ内容がわからない低年齢の子でも真剣に耳を傾け、なんとなくでも「悲しいお話」ということを理解してくれているようです。
子どもたちに命を慈しむ心を芽生えさせ、動物を棄てたり虐待したりすることのない世の中になることを願い、活動を続けていらっしゃいます。
誰もが気軽に相談できる組織づくり
「猫に関する悩みを抱えている人が、解決できる組織に相談ができないことも問題のひとつ」と話す、橋本さん。
たとえば野良猫が増えすぎていたり、家の中で猫が増えすぎたりしても、どこに相談していいかわからなかったり、後ろめたさから黙っていたりするケースが多く見られるそうです。
そういった事情で相談が遅れ、気付いたときにはどうしようもない状況になっているというケースも少なくありません。
問題が重篤化しないためにも、Happy Tabbyが窓口になり、誰もが気軽に相談できるような組織づくりを目指していらっしゃいます。
関心を持ってもらうための啓発活動
ご相談をいただいた方に、不妊手術ができなかった理由を伺うと「動物病院に連れていきたいけどお金がなかった」「動物病院が遠方にあるが、車がなくて連れていけなかった」など、人によってさまざま事情があるそうです。
そこでもっとも問題になるのは、やはり「お金がない」という問題です。「お金の問題は、社会みんなで助成していけるようにしたい」と話す、橋本さん。
家の中で増えすぎるのもさることながら、野良猫が増えすぎるのは社会全体問題でもあり、もはや猫好きだけで解決できるものではありません。
Happy Tabbyでは、さまざまな企業や一般の方々にも興味を持っていただけるよう、啓発活動や募金活動もおこなっています。
ボランティア活動を始めたきっかけ
きっかけは前職でのボランティアさんとの出会い
「以前務めていた病院で、ボランティアさんと出会ったのがきっかけ」とお話くださる、橋本さん。
そこでさまざまなボランティアさんと出会ったそうですが、ボランティアさんに共通していえることは、「みんな必死に活動している」ということ。
ボランティアさんは身銭を切って、プライベートの時間を猫のために費やし、それでも、あとからあとから相談が舞い込んでくる……。
橋本さんはそのことに違和感を覚えるとともに、理不尽さを感じ、なんとか助けてあげたいと思ったそうです。
ボランティアさんの社会的信頼を高めるために
また、ボランティアさんのなかには、野良猫に不妊手術をうけさせたうえで、管理をしている方もいらっしゃいます。
そういったボランティアさんが餌やりをしていると、地域の方に「お前が餌をやっているから猫が増えるんだ!」と、言われてしまうことがあるのだそう。
お世話している猫は、もともとは近隣の人が餌だけをやって増えてしまった猫。
ボランティアさんも自分のお金を使い、プライベートの時間を削ってお世話をしているのに、なぜこんな扱いを受けなければならないのかと、橋本さんは憤りを感じたそうです。
そこからボランティアさんたちを社会的に支えたい、獣医師としてどう支えてあげたらいいかと考えた結果、今の活動をスタートさせることになったとお話くださいました。
Happy Tabby Clinicにやってくる猫について
来院する猫のほとんどは、TNR活動に関係する猫たち
年間3000頭を超える猫の不妊・去勢手術をおこなっているHappy Tabby Clinic。クリニックにやってくるのは飼い猫が半分、野良猫が半分ぐらいとのこと。
ただし、いずれも来院する猫の多くは、TNR活動に絡んだ猫たちです。
Happy Tabby Roomで預かっている猫について
ほとんどはTNR活動に絡んだ猫たち
Happy Tabby Roomでは、基本的に元飼い猫は預かっていません。飼い主が高齢で亡くなったり、夜逃げがあった部屋に取り残されていたりなど、どうしようもない猫だけは、場合によって引き受けているそうです。
Happy Tabby Roomにいる子のほとんどは、TNR活動に絡んだ猫たちです。
TNR活動は不妊手術ののち、元にいた場所に戻すのが基本。しかし、なかには外に出したら死んでしまうような子もいるそうで、そういう場合は連れてきたボランティアさんと相談します。
それで保護してもらえるのが一番ではあるものの、ボランティアさんにお任せしてしまうと、今度は捕獲の手がとまってしまいます。
Happy Tabbyが引き受けることで、ボランティアさんが手を止めずにTNR活動に注力できるような場合は、お手伝いすることもあるそうです。
譲渡の流れ
Happy Tabby Clinicには、保護猫のお部屋があります。Happy Tabby Roomと呼ばれているその場所には、常時30頭前後の保護猫たちが暮らしています。
里親募集中の猫は、インスタグラムや外部里親募集サイト「ぺっとのおうち」や「ハグー」、「OMUSUBI」にて掲載中。
また、2022年2月には、Happy Tabbyは移転しリニューアルオープンいたします。
Happy Tabby Roomは、保護猫カフェとして、より気軽に保護猫さんと触れ合っていただける場所になります。
保護猫カフェに通っていただき、猫たちと触れ合う中で、お気に入りの子ができましたら、譲渡させていただくことも可能です。
(※譲渡に関しては、譲渡条件がございます。詳しくは、譲渡担当者とご相談ください)
STEP 1 予約
まずは、一度猫たちに会いに来てください。おみあいのご予約は、予約フォームやお電話、メールにてお願いします。譲渡担当者から、折り返しご連絡いたします。STEP 2 おみあい
おみあい当日は、ぜひご家族皆様でお越しください。単身の方は後見人の方とご一緒にお越しください。(後見人について、詳しくは譲渡担当者とご相談ください)STEP 3 面談
おみあい後に、譲渡担当者との面談がございます。エントリーシートにご記入をお願いします。STEP 4 トライアル
おみあい当日に猫を連れて帰ることは出来ません。正式譲渡前には必ずトライアル期間を2週間設けております。後日、こちらからご自宅までお届けいたします。お届け時の交通費のご負担をお願いいたします。(距離によって異なりますので、ご確認ください)STEP 5 譲渡決定
トライル期間中に何も問題がない場合は、正式譲渡となります。
譲渡後も飼育方法のご相談などございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。ぜひ猫ちゃんとの暮らしを楽しんでください!
活動においての苦労
知ってほしい人に実情を届けるのが難しい
多くの方にこの実情を知ってほしいものの、それどうやって届けたらいいのか悩んでいる、とお話くださいました。
Instagramでも、四コマ漫画を投稿していらっしゃる橋本さん。「読まなくていいから、とにかくイラストだけでも見てほしい」という想いで、日々イラストをお描きになっているそうです。
これから猫を飼う方、里親になりたい方にお願いしたいこと
猫を迎えるなら、保護猫を
「ペットショップで買うのではなく、行き場探している子を助けてあげてほしい」と話す、橋本さん。
野良猫は馴れない、病気あるという偏見を持たれがちですが、ペットショップにいる子と変わりはありません。もちろん病気があれば治療してから譲渡していていますし、汚いということもありません。
なにより保護猫を1匹迎えていただければ、ボランティアさんが次の行動に移すことができます。
「1匹の猫だけでなく、それ以上の猫を助けてあげることができる」ということを、力強くお話くださいました。
一方、ペットショップで売れ続けると、さらに売ろうとどんどん猫がつくられていきます。また、業者が廃業するときに、いらなくなった猫が捨てられるという事件も起きています。
Happy Tabbyでも廃業ブリーダーからレスキューした繁殖猫を手術することがあるそうですが、「何度も出産をしているせいか、子宮ボロボロの子も多い」と話す、橋本さん。
ペットショップで買わないということは、そういう子たちを救うことにも繋がるそうです。
そして「動物を飼ったらなにがあっても捨てないでほしい」ということを、最後にお話くださった橋本さん。
保護猫にはそれぞれのストーリーがあります。迷い猫でお外でさまよっていて、運よく保護された子……。外で生まれて、お母さん猫が一生懸命に子育てした子……。交通事故から奇跡的に生還した子……。
過酷な環境で暮らし、多くの人の手によって助けられた命だからこそ、しっかり責任をもったうえで迎えてほしいと思います。