【保護活動者×獣医師】猫に歯みがきについて対談しました

皆さんは、愛猫に歯みがきを実践していますか?
犬の歯みがきが一般的になりつつある一方で、猫の歯みがきの普及率はまだまだ低いといわれています。

今回はhugUにご登録いただいている保護活動者「ねこひげハウス」代表・石川さんと、ライオン商事株式会社の獣医師・遠山先生が猫の歯みがきについての対談をおこないました。

ねこひげハウスとは

埼玉県八潮市で知人兄弟が長年に渡り集めてしまった猫約240頭と犬10頭のお世話をしてきたことをきっかけに保護活動を始めました。保護犬猫シェルターを運営しながら里親探しをはじめ、病気の猫の看病、看取り、毎日の掃除や管理などをおこなっています。

それから約10年が経ち、その間にねこちゃんたちも新しいご家族に迎えられたり、年を取ったりして、今は猫80頭、犬2頭と同じおうち(シェルター)で暮らしています。

ライオン商事株式会社とは

ライオン株式会社の子会社であるライオン商事株式会社は、ペット用品専業の会社で、オーラルケアフードと用品、トイレ関連用品、空間ケア用品、ボディケア用品などの製造販売をおこなっています。

どうして「猫」にオーラルケアが必要なの?

石川さん:私はボランティア活動に参加させていただく前から猫を2頭飼っていましたが、まだ若い猫ということもあり、あまりオーラルケアをしなければならない、という意識はありませんでした。その意識に変化があったのが、ボランティア活動をはじめてから
約10年前にこのシェルターに入らせてもらいボランティアをするなかで、ごはんを食べるのに苦労している子が多かったんです。それを不思議に思って、獣医師の先生に相談してみたところ、オーラルケアの不足が原因だったみたいで。
このことがきっかけで、猫にもオーラルケアが必要ということを学んでいきました

遠山先生:猫もオーラルケアが必要だと思ってくださる方は、まだまだ少ないのが現状。当社の調査では、歯ブラシを使用される方は2021年で約10%ですシートや歯みがきおやつを利用される方を含めるともう少し多くなりますが、まだまだ普及させていかなくてはならないと思っています。

石川さん:そうですよね。里親様でも「猫のお口のケア!?」と、驚かれる方は多いです。
そして、このシェルターの猫たちも年齢を重ねていくよ、、腎臓にトラブルを抱える子が多いんです。よくよく気にしてみると、全身的な健康とお口の健康が関係しているように感じるんです。これは完全に感覚値ですが、それに気が付いてからですね。お口の中を気にするようになったのは。

普段のお口のケアを教えてください。

石川さん:現在シェルターにいる猫たちは約80頭。頭数の多さから、1頭1頭を確実に毎日チェックしていくというのは難しいですが、意識はしています。

食事はドライフードを基本とすること

石川さん:ウェットフードは歯垢がつきやすく、歯石の原因になることが多いです。食事は、基本的にはドライフードを嚙ませることで歯垢を抑えることを期待しています。

おやつは歯みがきおやつ

石川さん:おやつとしてあげて噛ませて口腔ケアができる歯みがきおやつ。日ごろのおやつとして取り入れたりもしています。

身体を触って体調を見るのと同時にお口のニオイを嗅ぐ

石川さん:これは触らせてくれる子限定ですが、できる限り毎日身体を触って体調の確認をしています。
そのときに、一緒にお口のニオイを嗅いで、口臭もチェック。もしニオイがきついようなら、口の中をしっかり見ています。やっぱり口臭がお口の健康のバロメーターかなと思っています。

遠山先生:そうですね。口臭がきつくなってきたかどうかは、お口のケアをする上で、とても大切です。また、お口の中を見られるのであれば、歯垢や歯石が付きやすい奥歯も見てあげられるといいですね。

石川さん:同感です。

遠山先生:でも、お口を触ることができる子が、ねこちゃんの場合、本当に少ない。なのに、ねこひげハウスのねこちゃんがみんな触らせてくれるのは、すごいです!

石川さん:ありがとうございます。でも、やはり成猫からシェルターに来た子などは、あとからお口のケアをすることはなかなか難しいです。

遠山先生:そうですよね。最近ねこちゃんのお口のケアをしたいという方は増えてきましたが、「やりたくてもできない」「お口に触らせてもらえない」というご相談をいただくことも多いです。確かに、ねこちゃんは、神経質な子が多いので、いきなりお口に触るのは難しい場合が多いです。

猫のお口のケアをしている人、どのくらい?

遠山先生:当社の調査では 、週に1回以上ねこちゃんのお口に何らかのケアをしている人の割合は19%。一方、わんちゃんでは50%もの方がお口のケアをしており、まだまだねこちゃんのお口のケアの普及度は低い印象です。
遠山先生:さらに、2歳までにお口の中に健康に問題のある子は、ねこちゃんで7割、わんちゃんでは8割。ねこちゃんだからお口のケアをしなくていい、ということではないんです。

石川さん:これから子猫をご家族に迎える方には、お口に触らせてもらったり歯ブラシに慣らしたりすることが大事ということを伝えたいですね。お口に健康課題があり食べたいのに食べられない子たちを見ていると、本当にお口の健康維持が大切なことがわかります。

大切なのは諦めずに続けること

遠山先生:さらにシニアになってくると、歯みがきが難しい子も多くなってきます。でも、お口のケアが大事であることを「わかっている」のと「わかっていない」のでは、まったく違います。おうちの子のために何ができるのかを飼い主さんお一人おひとりに今一度考えて欲しいです。歯みがきができないからと諦めるのではなく、少しずつでも「続けること」が大事です。

石川さん:私も同じ考えです。10年前から今まで、投薬や通院などで猫の嫌がることをしなくてはならないこともあり、たくさん引っかかれてきました。でも、今でこそそこまで引っかかれなくなってきたのは、引っかかれるタイミングがわかるようになり、手を放すことができるようになってきたから。これは諦めずに続けてきたからこそなのかと思っています。