里親になる心構えと条件

動物に宿る「いのち」

子犬や子猫を見た時、思わず「かわいい」と思いませんか?
動物学者の研究によれば、子犬や子猫を見た時には
「守ってあげたい思い」が呼び起こされると言われています。

「かわいい」と思うことは、何ら不思議ではありません。
無理に気持ちを押し殺す必要もないでしょう。

ただし「飼いたい」と思った時には、少しだけ時間をおいてみましょう。

ペットは「もの」ではなく、命ある「生きもの」です。

もし、子犬や子猫を迎えたとします。
かわいい盛りで、愛おしく感じることでしょう。

でも「かわいい」まま、ではありません。

まだ幼いころは、好奇心旺盛です。
いろいろなものに興味を示し、思いのままに行動します。
時には、行動がエスカレートすることもあります。

思ったようにいくことばかりではないのです。
人の子育てと同じように、ペットとしっかり向き合ってあげてください。

やがて、
成長するにつれ、幼いころに見えていた「かわいさ」は少しずつ失われていきます。

そのかわりに、向き合ってきた時間の分だけ「信頼関係」が築かれていきます。
信頼関係は、絆ともいえます。

深く結ばれた絆を通して、
幼いころとはまた違った「かわいさ」を感じることがきっとできるでしょう。

そして、
時が経てば、ペットも老年期を迎えます。
たとえば犬や猫は、人間よりも速いスピードで老いが進んでいきます。
体の変化に伴って、病院にかかることも多くなるかもしれません。
もしかしたら、介護が必要な状態になるかもしれません。

そんな時に、ペットを守ってあげられる力はありますか?
誰かがペットの側にいてあげられますか?

現在、法律でもうたわれている「終生飼養」。
ペットと末永く幸せに暮らしていくためには、
ペットを飼育する正しい知識と、飼養する環境が必要です。

「かわいそう」という同情ではなく、
「ただ生きていればいい」ということでもありません。

ペットを迎えると決心したら、
ペットがどうすれば、よりよい生活を送れるのか。
どうすれば実行できるかを、まずは考えてみましょう。



動愛法に明記された「終生飼養」

動物愛護管理法 第7条

「動物の所有者又は占有者は、命あるものである動物の所有者又は占有者として動物の愛護及び管理に関する責任を十分に自覚して、その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努める」(一部抜粋)



「動物の愛護と動物の適切な管理」を目的として、1973年(昭和48年)に制定された「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)」。

2005年(平成17年)と2012年(平成24年)に法改正が行われ、特に2012年の改正では「動物の所有者の責務として、動物がその命を終えるまで適切に飼養すること」と、いわゆる「終生飼養」の徹底について明記されました。



ペットを中心に考える

ペットの飼育放棄が起こる理由としては、

  • 飼い主の高齢化(健康不安、介護が必要な状態になったなど)
  • 飼い主の発病
  • 同居家族のアレルギー症状発症(特に子供)
  • 仕事が多忙で世話ができない
  • 転勤などによる引っ越し
  • 失業などによる経済困難

といった飼い主が抱える「事情」によるものや、ペットが暴れたり・噛んだり・吠えたりして飼育しきれなくなった……という飼い主の「飼育に関わる知識・意識の不足」が挙げられます。

里親となり迎え入れたペットは「新しい家族」です。
家族の幸せを考えることは、そう不思議なことではありませんよね。

ペットを迎えて、楽しみや喜びを感じられる時間を増やしていけるかどうか……「伴侶」として末永く幸せに生活できるかは、飼い主にかかっています。

幸せな生活を実現するために、ペットを「どう飼育し、どんな環境を用意すればいいのか」を考えていきましょう。


ペットの5つの自由 「ペットの5つの自由」は、ペットを適切に飼う(扱う)ための国際的に認められた考え方です。

ペットは、人間と同様に生きていくために必要な要求(基本的ニーズ)を持っています。
人の手によって飼育されているペットは飼い主のもとで生きているため、自らの意思でニーズを満たすことができません。

よって、飼い主がペットの持つニーズを満たしていく必要があり、そのために飼育ペットの習性を考慮した適正な取り扱い・適切な給餌および給水・健康管理・飼養環境の確保を行い、できる限りペットが快適に生活を送れるようにする責任があります。


ニーズ1 飢え・渇きからの自由

ペットの種類・年齢・健康状態に合わせて適切な食事を与えます。
水は常に新鮮なものを用意しましょう。


ニーズ2 痛み・負傷・病気からの自由

ペットがケガや病気を抱えた場合に必要な治療を受けさせます。
日ごろから病気の予防を行い、健康診断など定期的に健康チェックを行いましょう。


ニーズ3 不快からの自由

ペットが快適に過ごせるように、清潔で安全で快適な飼育場所を用意しましょう。


ニーズ4 恐怖、抑圧からの自由

ペットが恐怖や抑圧を受けないよう、そして精神的な苦痛や不安の兆候を示さないよう、飼い主は的確な対応を行います。


ニーズ5 本来の行動がとれる自由

それぞれのペットが、本能や習性に合った「動物本来の行動」がとれるように飼い主は工夫をしましょう。
では、上記5つのニーズを意識しながら、具体的にどんなことが飼育に必要となるか考えていきましょう。



飼育に必要な心構えと条件

里親としてペットを迎え入れる際には、「ペットの命を預かる」という心構えと、「ペットが健康的かつ快適に暮らせるようにする」ための条件を満たす必要があります。


ライフスタイル

迎えたいペットの種類や大きさ、特徴などはあなたのライフスタイルに適していますか?
あなたは健康で、ペットの世話を日々行うことができますか?

例えば、犬を飼う場合は散歩が必要になります。プライベートの時間が減りますが、愛情を持ってペットと向き合えますか?

ペットの世話

ペットに安全で快適な飼育環境を提供できますか?
毎日欠かさずにペットの世話をする時間を確保できますか?

あなたの身に何か起きた時や天災が発生した時など、ペットの飼育が困難になった時、ペットの命を守る方法を考えていますか?


居住環境

ペットを飼う際の大前提は「ペットが飼育できる環境がある」ということです。

例えば、賃貸物件でペット飼育が可能な場合でも「条件付きで飼育OK」の可能性もあります。事前に確認を行いましょう。もし、飼育不可の場合はいかなる場合でもペットを飼うことはできません。
また、持ち家の場合でも住宅が密集している地域にお住まいの場合には近隣に配慮する必要があります。

ペットの飼育には適切な広さの飼育スペースが必要です。普段から清潔にし、ノミやダニの寄生を抑えましょう。


近隣地域への配慮

ペットの鳴き声や糞尿の処理などで近隣に迷惑をかけないよう、しつけやマナーについて勉強し、実践できますか?
飼育しているペットが地域社会のなかで迷惑を及ぼさないように、育てていくことは飼い主の責任のひとつです。


家族全員の同意

家族と同居のもとペットを飼育する場合、家族みんながペットの飼育に賛成していますか?協力して世話ができるでしょうか?


家族構成

出産を控えているご家庭、小さな子供がいる、未成年・学生・高齢者(例:60歳以上)だけが住んでいる、アレルギーや喘息持ちの家族が同居している……と、いう場合はペットの譲渡ができない場合があります。


長時間または頻繁に留守をしない

頻繁に留守番をさせないよう、気をつけましょう。
種類もしくは個体による差はありますが、ペットを長時間孤独にしておくことは好ましくありません。ストレスによる問題行動を起こすこともあります。

一人暮らしや共働きのご家庭は、協力先の確保が必須です。


適切な医療を受けさせる

ペットが突然の病気やケガを抱えた際にも、すぐに対応できますか?
急病はもちろん、慢性疾患の場合は長期的な治療を伴うため、医療費は決して安いものではありません。


高齢ペットの世話

高齢のペット(例えば、犬は7歳前後・猫は10歳前後)は、健康不安を抱える個体が多くなります。日ごろからの健康チェックが大切です。

ペットが病気を抱えた際、どんな風に世話をしていくか考えていますか?
また、治療にかかる費用は持ち合わせていますか?

かかりつけの医療機関や相談できる仲間・家族がそばにいると心強いものです。


迷子時の対策

散歩などで外出する、もしくは脱走の可能性があるペットには「マイクロチップ」や「迷子札」の装着をしましょう。

保健所など行政施設には「所有者不明」として保護されるペットが相当数おり、誰かに飼育されていたペットでも収容期限が過ぎると殺処分となる場合(※)があります。
※収容期限を迎えても、収容期限延長となる場合もあります。

マイクロチップや迷子札など、ペットの身元が分かるものが装着されていれば返還がスムーズに進み、無用な殺処分の数を減らすことができます。


災害時の備え

地震や火災が発生した際、飼っているペットの命を守ることができるのは飼い主だけです。
非常用の水や食料を備えておくとともに、避難の際にペットとすぐ移動できるようにトレーニングをしておきましょう。
(例えば、キャリーバッグへとスムーズに入れるようにしておく……など)


先住ペットとの関係

もし先住ペットがいる場合は、先住ペットとの相性を確認することが大切です。トライアル飼育が可能な場合は、機会を設けるとよいでしょう。多頭飼いとなる際には、先住ペットと新たに迎えるペットの両方について不妊・去勢手術を行うことが譲渡条件となる場合もあります。



保護された動物を迎えるということ

ここまで紹介してきた「飼育に必要な心構えと条件」は、譲渡に向けたやりとりのなかで、里親希望者へ実際に行われたアンケートや面談の内容をベースにしています。

こうした多岐にわたる条件を設けている理由は、保護した動物たちが新しい環境で幸せにすごしてほしいという思いからです。

行政施設や保護活動者のもとに保護された動物の状態は様々で、なかには病気・ケガを抱えていたり、特徴的な行動を見せたりする個体もいます。
また、これまでの飼育環境、はっきりとした年齢、病歴などの詳細が分からない場合もあります。

里親を探しているペットは、さまざまな事情を背景にして保護されました。
飼育放棄されて保護されたペットが、里親に引き取られた後にまた飼育放棄された……という事態は絶対にあってはなりません。

行き場をなくしたペットを新しい家族に迎える時、一番大切な心構えは「愛情を持ってペットと接する」ことです。

ペットが保護された背景を理解したうえで、ご自身のライフサイクルをしっかり見据えましょう。
そして、ペットと「ともに幸せに生きていく」と思えた時、里親希望の申し出を行ってください。



【参考】
環境省「飼う前も、飼ってからも考えよう」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2708a/pdf/full.pdf
(PDFファイルが開きます)
環境省「動物の愛護及び管理に関する法律が改正されました<一般飼い主編>」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2508b/full.pdf
(PDFファイルが開きます)